東京、総武線、新宿の隣。まさか自分の家から富士山が見えるとは思わなかった。
大阪の父と、北海道の母。東京で出会った二人の間に私が生まれて。ここに住んでもう二十年以上。
通っていた小学校は何年も前に廃校になり、その頃の友だちのほとんどは家族共々ここを離れ、今は私とマオちゃんとミキちゃんくらいしか住んでいない。
私にとって「木」や「森」、「山」とか「故郷」という言葉は、ある意味、記号のようなもので、それこそ「ジブリ映画」や「ドラえもん」の世界の言葉とさえ思っていた。
そういった「自然」に触れるには、ここからはまず中央線に乗り換えて、新幹線や飛行機に乗って何時間もかけないと行けない様な、見えないような、…そういった手間や時間をかけないと触れてはいけないような。そんな高尚な雰囲気すらあった。
両親が別れ、私だけがここに残り、駅の近くのマンションに引っ越して、今年でまる五年。ある日、久々に早く目が覚めたので、ストレッチでもしようかと、十階の屋上に向かった。
エレベータを降りて、重い鉄の扉を開けると、すぐに眼に飛び込むのは新宿の高層ビル群。
うわっと入ってくるその迫力と、高さと、ちょっとした眩暈のような感覚が好きで時々訪れるのだが、ふと右手に目をやると、、、なんと富士。
冬の初め、空気が澄んでいることもあって、肉眼でうっすらと雪化粧しているのも分かる。
会えるとは思っていなかった芸能人に、ばったり道端で出くわした。そんな感じ。
東京、総武線、新宿の隣。そして、富士山。